いまさら聞けない受験の基礎知識

 「いまさら聞けない受験の基礎知識」は、有名予備校の講師や首都圏の超進学校の生徒には当たり前の受験についての基礎知識を、多くの高校生や親御さんに共有していただく為のブログです。

07)

 文法書は無意味?

▽ ある高校のバカな宿題

 さて、私は、高校を卒業してすぐに、中学時代の友人たちと同窓会を開きました。そこで聞いたのは、あまりにもばからしい宿題の話でした。

「うちの高校の教師なんて、ほんとうにバカでさ。フォレスト(文法書です!)まる写ししてこいっ!っていうんだよ。それが夏休みの宿題。本当にバカでしょ! ありえない!」

 私はその話を聞いて唖然としました。これほど効率の良くない勉強法は無いからです。

▽ あなたの性格は?

 私は基本的に受験勉強では、辞書と文法書は必要ないという立場です。

 もちろん、これらと使い方によってはとても役立つとは思います。しかし、本当に分からないことがあったときに、これらのものを参照するような性格の人はどれほどいるのでしょう? また、時間的な意味で言っても、これらを参照する余裕のある人はどれほどいるのでしょう?

▽ 英文法・英単語・英熟語のやりかた

 基本的に私は、英文法・英単語・英熟語・古文文法・漢文句法・古文漢文の語彙はすべて、問題演習のなかで習得すべきだと考えています。

 英単語に関して言えば、

① 単発暗記で覚えるやり方

 ターゲット、PSSsmart.fmなど出てきた単語をそのまま覚えるやり方

② 語源から覚えるやり方

 語源英単語・解体英熟語など

③ 文脈から覚えるやり方

 速読英単語・リンガメタリカ・アカデミックなど

がありますが、いずれにせよ参考書の中にある単語のまとめページなどを用いて確認テストをすることは絶対に必要なことです。(幸いなことにネットに転がっているアプリやソフトはこれを自動的にやってくれます。)

 英文法に関して言えば、東進のサイトから無料で利用できる過去問データーベースでセンターの過去問を十年分ほど手に入れることができるので、文法部分だけ抜き出して演習すればいいでしょう。学校でセンター18年分などをもらう人もいるでしょうから、それでもかまいません。

 センター試験演習をひたすらやる効用をいくつかあげましょう。

 まず、第一に、どの文法事項が頻出であるかということがわかることです。

 一般に、参考書や学校・予備校の授業では、一度扱った事項は、一度しかやりませんが、センター試験では何度でも繰り返し出てくることがあります。どれが良く出てくる文法事項で、どれがあまり出てこない文法事項かが分かれば、記憶に強弱をつけることができますし、テストの結果もより早く向上します。

 第二に演習量の問題です。

 センターの文法問題は約二十問。これは追試とあわせると、一年に四十問。

 十年分だと四百問。これは英頻1000やネクステージに比べると少ないように感じますが、これらの参考書は語法も入って1000問ですから、文法の問題としてはほぼ同じ分量を確保できます。

 十八年分だと一千問近くになるわけで、これはどんな参考書でもかないません。

 第三に出題形式の問題です。

 一般の参考書では、不定詞なら不定詞でまとめて演習をしますが、本番の試験ではこのような形式で出ることはありません。こと、難関大に限って言えば、toのない不定詞や、ifのない仮定法ばかり出てくるわけで、これらを見抜く眼を持たなければ合格はおぼつきません。

 ですから、次々とランダムに問題が出てくるセンター試験の過去問で文法を固めるのがお勧めです。

 それ以前の準備としては、後述しますが、とにかく構文を40100本ぐらいは理屈抜きで覚えてしまうといいでしょう。三十回も音読すれば誰でもできることですし、もし出来なければ好みの洋楽の歌詞と合わせて覚える方法を私が提案させていただきますので、どしどし受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)していただければ幸いです。

 英文法関係の参考書を買いまくるというありがちな失敗を避ける意味でも、センター試験を解きまくることを私はおすすめします。解説などでわからないところがあれば、それこそ先生に聞いても良いですし、私のメールアドレスも乗せておきますから、どしどし聞いてくださってかまいません。

 英単語・英熟語については、PSSsmart.fmなどでさくさくフラッシュカード暗記していくのも良いでしょう。古文文法・漢文句法・古文漢文については、独自のテキストを無料でお譲りできますので、私まで受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)にきていただければ幸いです。

 使える! 東進の「過去問データーベース」

http://www.toshin.com/nyushi/


 smart.fmは東進の英単語テストより使える!

http://smart.fm/


 英単語テストPSSの威力!

http://www.takke.jp/pss/


 アルクの語源辞典

http://home.alc.co.jp/db/owa/etm_sch


 接頭辞をまとめてみた

http://readingmonkey.blog45.fc2.com/blog-entry-401.html


▽ 語法は妄想から

 また、語法についても、独特の考えがあります。

 語法問題というのは、慣用句についての出題ですが、なぜ私たちはここでつまづくのでしょうか?

 まず、言われてみれば当たり前のことですが、熟語をばらばらにしたときのそれぞれの単語の意味と、熟語そのものの意味がまったく結びつかないからです。

 たとえば、put up withという英熟語があります。これは、我慢するという意味の英熟語です。

 これの、それぞれの単語の意味は、putが置く、upが上げる、withが~を、です。さて、どのように我慢するという熟語の意味に結びつけるのでしょう?

 まず、upが上げるという部分に着目します。よく、我慢することを棚に上げて~などといいますよね。いやなことを(with)、棚の上に(up)、置く(put)といったような連想を作って、ノートに書きます。

 これは下ネタも交えて作るとさらに効果的です。

 学校で配られるような熟語集を使っても良いですし、前述の文法と同じやり方で自分が志望する大学の語法問題を使ってもかまいません。はたまた、無料の語彙学習ソフトPSSsmart.fmを使うのも良いでしょう。

 うまい連想が思いうかばないときは、私はこういう妄想を生徒に教える特訓合宿をもやっていますから、私に受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)してくだされば、いつでも対応させていただきます。

 好きな音楽から英熟語を1000覚える方法

http://www.eigoraku.com/napster/kudousi.html



1-1-3.【英語長文読解】

 本番に役に立たない英文読解の授業!

▽ 時間が甘い

 私は、高校や予備校の英文読解の授業はほとんど役に立たないと断言できます。なぜなら、本番ではあんなにゆっくりと英文を読むことはまずありえないからです。

 センター試験でさえ、十年前の二倍近くの量を読ませます。慶應SFCの試験は、二時間で30004000単語を読みこなさなければなりません。実際に、文章を読むのに割ける時間はせいぜい一時間がいいところでしょうから、一分あたりでもかなりの単語を読まなければなりません。

▽ 解説が適当

 長文読解の講義については、解説も、ただ文章の一部分を引用してきて、であるから(2)で当たり前だよね? といったようなものが多くうんざりします。

 そのような解説には、生徒が再び問題演習するときにその結果を再現できる保障がありません。そして、なによりも、いつ、だれが、どんな状況で解きなおしても同じ結果が得られるという普遍性がありません。

 基礎は文法ではなく、英文解釈でもなく、教養にあり!

▽ どんどん長くなる入試問題

 また、先ほども申し上げましたように、入試問題はどんどん長くなっています。センター試験は十年前の二倍に、逆転合格を狙ううえで重要な難関私立大学でも、超長文といわれる30004000単語の問題が出てきます。

 しかし、これらはかならずしも悲観すべき現実ではありません。

 まず、ここ数年のうちに文中の構文をとるのが非常に楽になりました。もはや、英文解釈不要論をぶちあげても良いぐらい、とにかく英文を読むのが楽になったのです。それこそ、意味のまとまりごとにスラッシュで区切って、前から後ろに読んでいけるようになった。後ろから前に読み返す必要がなくなった。英語を英語のまま理解しても、問題に答えられるようになった。

 これは入試問題の変化としては、すばらしいものだと思います。とかく使えない英語だといわれてきた受験英語が、使える英語に変わりつつあるのです。

 また、国公立大でも、Z会の解体英語構文や、セレクト70構文のような構文集を暗記すれば、簡単に文章構造が取れるような出題が増えてきた、というよりもほとんどがそのような問題になりました。

 ですから、文章量が増えた代わりに、問題は解きやすくなった。

 そういう意味で、いまだ細かい文法事項に固執する塾が多いですが、私は文法よりもまず先に単語を教えるべきだという立場です。文法がわかっても、英語の成績がぐんと伸びることはないですが、とりあえずうちの語源英単語特訓で二週間で5000単語も習得すれば、生後の成績はまずどんな模試でも偏差値60を切ることはなくなります。文法はそのあとでも十分です。

 もちろん、これは、勉強法としては、あるいは邪道かもしれません。しかし、勉強を実行する上で、一番大切なのはやる気の持続です。

 文法を始めに総ざらいするのは大切なことかもしれません。しかし、文法を完璧にしてもとんと成績が上がらなければ、教え子は単語をやる前に勉強をやめてしまうものです。ですから、単語をある程度見につけたあとに、文法を洗いざらいやるほうが、長期的にみたら私は良い結果をもたらすと考えています。

 また、単語を覚えることよりも、さらに大切なことは、文章の背景となる教養を知ることです。そうすることで、文法が分からなくても、構文が分からなくても、単語が分かるだけで(あるいは単語がわからなくとも前後の文脈から推測して)、ある程度、文章の意味を取ることができます。

 そのために、最も役立つ参考書としては、Z会のリンガメタリカやアカデミックがあります。言葉が少々難しいですが、MD小論文や現代用語の基礎知識などを一通りよんでおけば、言葉の意味がわからないということはなくなります。

 最新のiPhoneアプリで楽しく追い読み

 また、最新のiPhoneのアプリには、TimeNewsweekの記事をネット上から拾ってきて、音声で読んでくれる上に、googleの自動翻訳と連動して簡単な日本語訳を出してくれるものさえあります。

 まだ、実用段階ではありませんが、こうしたアプリも実用性が高くなれば使う必要は出てきそうです。なんたって無料ですしね。

 しかし、体系的に教養を学べるようなリンガメタリカ・アカデミックのような本は買っておいても損はないでしょう。

 VOA(ゆっくりとした音声で読み上げてくれます)

あらゆるニュースをゆっくりした音声で読み上げてくれるから追い読みに最適!

http://www.voanews.com/english/news/


 googleニュース検索(英単語で検索)

英単語でニュースを検索し、自動音読サイトで音声を出し、マウスオーバー辞書で単語の意味を確認しながら追い読みすることができる。

http://news.google.com/


 マウスオーバー辞書(発音機能付)

http://www.lingoes.net/en/translator/download.htm


 自動音読(カラオケのように音読してくれます)

http://text-to-speech.imtranslator.net/



 身に付く読み方はゆっくり音読!

▽ 音読するまえの下準備

 これは、一日一時間の勉強でも、50枚の英語論説文を暗誦するのに最大一ヶ月、300枚の英語論説文を暗誦するのに最大半年しかかからないというすさまじい方法です。

 しかし、前述したように、この方法では、音読をする前に以下のような下準備が必要です。

一、英文と日本文に対応する番号を振る。

 これは、英語を読んでいるときに、どんな意味をもった文章を読んでいるのかが分からなくならないように、常時日本語訳を参照できるようにするためのものです。

 意味がつかめなくなったときに、ぱっと日本語の意味を参照できるようにすることによって、勉強を無駄な作業にするというありがちな失敗をせずにすみます。

二、意味のまとまりで文章を区切る

 まず、SVO/SVOO/SVOCを取ります。補語(M)は区切ってもかまわないし、他にも後置修飾や関係詞は区切ってもかまいません。

 あと、わかりやすい目安としては、リスニングの際の息の切れ目です。

 これに耳をすませてやることで、文章を読む効率性は一気に上がるはずです。分かりやすいのは、抑揚の付け方です。ある程度読み方が下がったところで区切りをつけるとちょうどいいことがままあります。

三、分からない単語の上に日本語訳を書く

 これは、分からない単語があったときに、そこで音読が泊まらないようにするために必要不可欠なことです。文構造がとれるようになれば、おのずと日本語訳のどの単語が英語のどの単語に対応するかが分かりますから、辞書など引かずにすむようになります。

 これは文の構造をとる上でも、わりと大切な作業なのかもしれません。

四、文構造がわからなければノートにまとめる

 少なくとも私は、「ビジュアル英文解釈」や「英文解釈講座」はやる必要はなかろうという立場です。逆転合格を目指す生徒たちは、英文解釈に時間を割くよりだったら一つでも多くの単語・熟語・構文を覚えてしまったほうがドラスティックに成績が向上するというのが、まず一点。他にも、前述したように入試問題の長文化と、それにともなう文章解釈の簡易化により、かつてほど正確な英文解釈が必要なくなったからというのがもう一点。

 さらにいえば、速読英単語やリンガメタリカ・アカデミックには、分かりにくい構文についての説明があります。すべてを丸写ししてノートにまとめる必要はありません。

 しかし、

① 音読するうえで、どうしても意味が分からなくて詰まってしまう

② 分からない単語があるときに、それに対応する日本語を見つけられない

 などの困ったことがあれば、その部分だけは構文メモを取っておいても、バチはあたらないでしょう。

五、わからなくても最初の単語だけ発音してみる

 さて、ここまでやって、いよいよ音読です。

 CDを聞きながら、音読をすると最初のうちは、スピードについていけないはずです。後述するMeRuなどをつかいながら、スピードをゆっくりさせてもいいのですが、それでも言葉のつなぎ目などは発音が不明瞭で、音読することに困難を感じるかもしれません。

 そんなときは、意味の切れ目の一番最初の単語だけ発音してみることをお勧めします。他の単語は無視してかまいません。ごにょごにょと言ってみてもかまいません。

 とにかく、最初の発音だけを明瞭に発音することにこだわります。他の単語なんてどうでもいいんです。

六、だんだん単語を増やしてみる

 そして、だんだんと単語を増やしていきます。ごにょごにょとしか読めなかったところが、繰り返していくうちに後ろにある単語も読めるようになります。

七、最終的にすべて読めるようにする

 最終的には、すべての単語をすらすら読めるようになり、これを繰り返すことで暗誦できるようになります。目安としては、十回~三十回程度で、私は現役時代の四十五回やっておりました。多すぎますね。

 50枚の英語論説文を暗誦するのに最大一ヶ月、300枚の英語論説文を暗誦するのに最大半年しかかからない最強の方法です。

 もちろん、本当はもっと細かいステップがあるのですが、それは個々人によって違うので、詳しくは受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)していただければお答えします。

 また、リンガメタリカには、英作文対策のページもありますので、つくってみたらlang8で添削を受けてみるといいでしょう。これも完全無料です。

 スピード調節機能付プレーヤー MeRu


http://hp.vector.co.jp/authors/VA035069/products.htm


 無料音声チャットomegleでぺらぺらイングリッシュ

http://omegle.com/


 lang-8で無料英作文添削!

http://lang-8.com/


56)

1.そもそも、高校・予備校・塾・通信添削は役に立つのか? 

▽ 単語・熟語・文法・小論文は独学で自己責任でいいのか

 多くの予備校や高校での授業は、単語・熟語を生徒の独学に任せます。もちろん、このページからあのページまで覚えてきてね、というぐらいの指定はしますが、覚え方を教えてくれることはありません。

 記憶力がなくて困っている生徒にとって、これほど困ったことはありません。

 それだけではありません。

 予備校の授業も、学校の授業も、生徒があらかじめ単語・熟語をある程度習得しているという前提で進められていきます。ですから、ある程度の基礎が固まっていないにも関わらず予備校や学校に通うことはムダでしかありません。

 にもかかわらず、教師がそういった場所に通わせつづける理由は一つしかありません。予備校であれば売り上げのため、高校であれば中退・不登校などの揉め事を起こしたくないという事なかれ主義のためです。もちろん、通学は生活リズムの固定のために大切だという意見もありますが、それなら図書館にでも行けばいいのです。

 私は、自分の教え子には、まず単語と熟語の覚え方の授業をします。それも、覚え方を説明するだけではなくて、単語の語源(接頭辞・接尾辞・語幹・名詞変化)や熟語の成立過程まで遡って、5000の単語、1000の熟語のそれぞれの覚え方を逐一詳しく解説します。

 それだけではありません。同じ語源を持つ二十単語ごとにテストをし、また繰り返し解説をします。この単語特訓・熟語特訓により、偏差値30前後の教え子が、二週間で5000単語を完璧に仕上げることもよくあることです。

 これはまず一週間目は、ひたすらテストゼミを繰り返し、間違った問題を次の周に持ち越します。二週間目は一日目~三日目までで二周目、四日目・五日目で三周目、六日目で四周目をやり、七日目は再びすべてテストしなおします。

 このようなやり方で間違えた部分を抽出しながら減らしていくのが、どの科目においても共通する最も効果的な学習法であることは、今までの指導経験からいても疑いの余地がありません。また、まぐれ当たりをふせぐために、最終日にはまさかの全問再テストをやることは、他の逆転合格系の塾よりもこの特訓が徹底的なものであることを示しています。

 その結果として、最初はbe動詞すら分からなかった定時制出身の教え子、不登校だった教え子、通信高校に通学していた教え子が、めきめき力を伸ばし、12月の慶大プレでは軒並み合格点に達しました。

 このような成績上昇は決して奇跡ではありません。

 理にかなった勉強法で、一日八時間程度の勉強量を確保していれば誰にでもできることです。

 さて、以下は、私が個人的に行った冬期講習についての質疑応答です。

 これを見ていただければ、いかにいまの高校・予備校の授業に意味がないのかがよくわかっていただけるはずです。


 Q1. 英単語の覚え方は? 

 A1. 英単語には、漢字でいうところの「へん」や「つくり」にあたる、接頭辞・語幹・接尾辞・名詞変化があります。 

 私たちは、ひとつの接頭辞・語幹・接尾辞・名詞変化から二十以上の派生語を芋づる式に覚えさせます。 小学生でも知っている100210のカタカナ語をとっかかりにして覚えるので、とても覚えやすいと評判です。

 もともと同じ接頭辞・語幹・接尾辞・名詞変化を共有する単語をまとめて習得するため、何度も繰り返しテストせずとも()、すぐに単語の意味を習得することができます。 


 Q2. 英熟語の覚え方は? 

 A2. 英熟語を覚えるのが難しい理由は、熟語を一つずつの単語に分解したときにそれぞれの単語が持つ意味と、もともとの熟語としての意味がうまく結びつかないことにあります。 

 私たちは、一度英熟語を英単語、あるいはその英単語の中にある接頭辞・語幹・接尾辞・名詞変化にまで分解したあとに、熟語の意味に結びつくように組み立てなおす作業を行います。

 このことで、しっかりと英熟語の持つ意味を記憶に定着させることができるばかりではなく、同じ動詞・前置詞を用いた10以上の熟語を芋づる式に習得させます。 


 Q3. 今回の冬期講習全体のコンセプトはなんですか? 

 A2. 英単語や英熟語に限らず、学習の中での「丸暗記」をなくして、「情報を整理しなおすことで知識を習得させる」ことを重視しています。 

 たとえば、actの派生語は20にも及びます。 

 驚くべきことに、女優(actress)も協議事項(agenda)も苦悶(agony)もすべてactの派生語です。 

 つまり、女優(actress)も協議事項(agenda)も苦悶(agony)も、actという語幹を共有している以上、なにかしらの共通点があるということです。 

 はて、それはなんでしょう? 

 こういうことについて考えてみることによって、いままで単語を丸暗記で習得したときから持っていた概念ががらりとかわり、より効率的に英語を習得することができると私は考えています。 


 講習の音声は、私に受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)していただければ無料でお譲りします。また、テキストについては、不十分な点は否めないですが、「カタカナ語源屋」というサイトがおすすめです。ただ、必ずしも各大学の傾向に合ったテキストではないですし、ムダな部分も非常に多いので、その点についても相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)さえしていただければ適宜対応いたします。

 カタカナ語源屋

100のカタカナ語から2000単語を習得できる。

http://homepage2.nifty.com/YONE/



▽ 本当に覚えられているのか?

 先生たちは基本的に勉強がわからない教え子に対して、もっと授業を取ることや、もっと授業をまじめに聞くことを求めます。

 しかし、本当に大切なのは、授業を聞くことでもなければ、まして授業を取ることでもありません。授業が分かりやすかったり、面白かったりすることでもありません。その授業の内容をきっかり覚えることです。だって、授業を聞いているときよりも、テスト勉強のときのほうが、学力が伸びているように思えるでしょう? つまり、そういうことです。テスト勉強のときのような真剣さをもって、授業を聞いたり、テキストを読んだりすることができれば学力は伸びます。そのために、私はテスト勉強のノートを解説するかのような三分から十分程度の短い授業をし、授業をした後はかならず確認テストをするのです。

 私の特訓合宿は、その流れをひたすら繰り返すだけのものです。

 このやり方は、意志が強ければ独学でも十分可能です。ネット上のソフトやサイトはそのような構成になっているところが多いですし、参考書での独学でも後述するやり方に従えば、私の特訓合宿と同じような効果を得ることが可能です。

 多くの高校や予備校の授業は生徒がきっかり覚えることに重点を置いているようには思えません。習得できたかどうかを確認する最も良い授業のやり方としては、講義が終わった後にすぐにテストをするというものがあります。しかし、そのような授業をしている高校・予備校は皆無です。

 どうしてでしょうか?

 おそらくは、そのようなテストゼミ方式の授業をすることで、いかに講師の教え方が下手でその場しのぎのものなのかが明らかになるからではないかと私は考えています。多くの教師は、頭が不自由で、なおかつ、それを生徒に見破られたくないのです。

 私は、教え子には、いつも三分~十分程度の短い授業をしたあとは、すぐにテストに取り組ませ、間違いがあれば解説していくスタイルをとっています。

 このように、講義のあと、すぐに復習できることは最も大切なポイントです。

 そういう点でいえば、返却までに二週間近くかかる通信添削も、あまり良い手段とはいえないでしょう。

 また、講師の力量にばらつきがある個別指導もあまりおすすめはしません。私も友達を自分の教え子に講師として紹介したことがありますが、使い物になるのは東大早慶の現役大学生だと十人に一人ぐらいです。それでも、紹介した友達があまりにひどい教え方で、途中で友達を(大切な友達であるにも関わらず!)クビにしてしまったこともあります。

 私は、教え子から付きっ切りで教えてくれる先生の紹介を頼まれたときには、よほどの実績があり(全国模試の一位・二位など!)、教え方も生徒の成績上昇も抜群の友達(be動詞が分からない教え子に、センター八割・慶大プレで合格点を取らせた。一日で古文の助動詞を習得させたetc...)しか紹介しません。

 しかし、逆転合格系の個別指導塾のなかには、本当に適当な採用の仕方をしている塾もあります。私が知っている例では、東大早慶医学部なら一発合格という塾もありました。そういった塾で、腰掛けか小遣い稼ぎぐらいの気持ちで働いているアルバイト大学生(もはや講師とすら言いたくない!)に指導を受けたところで、時間が無為に過ぎるだけだと私は考えています。

 少なくとも私は、教育に携わる者の誇りとして、言語学を専攻したいだの、卒業したらそのまま塾講師になるだの、そういった友達しか教え子に紹介することはできませんでした。そうでもしなければ、良心の呵責に悩まされるからです。

 スマイルズの「自助論」という本に書いてある言葉ですが、なにか後ろめたいことをして得た富を素直に喜ぶことはできません。わたしは、家賃三万円のアパートに住むつつましやかな生活であっても、良心に従って生きていくことを今日まで選んできました。これからどんな場所に住み、どんな生活をするかは分かりませんが、このような気持ちはいつまでも持ち続けたいと思っています。

 やはり、ちゃんと覚えきるには、私が主宰しているような特訓合宿に参加するなり、あるいは自分で(これから私が紹介する)一冊の参考書や一つのソフト・アプリ・サイトをテストが満点になるまでやりこむことが大切かと思います。

 やり方は詳しく後述しますが、わからないことがあれば、いつでも受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)していただければ幸いです。

27)


▽ まさかの高熱

 受験当日のコンディションは最悪でした。

 滑り止め受験の前日に人間関係(というか男女関係)で少し不愉快なことがあり、受験したその日に、嘔吐と下痢が止まらず、38.5℃の高熱を出してしまったのです。

 とりあえず、点滴を打って横浜に行ったのですが、まったく勉強することもできずに、受験直前の一週間がすぎていきました。

▽ 英語語法

 わたしは、問題を解くときに必ず自分なりの方法論をもって臨んでいました。

 SFCの英語は難しいことで有名ですが、文中の選択問題では語法と読解しか出ないことでも有名です。文法はほとんど出てきません。

 語法の攻略法は極めて簡単で、語源(接頭辞・語幹・接尾辞)に分解して、単語の意味を類推することです。習得方法は後述します。そうでもしなければ、短期間の勉強で、このような問題を攻略することはできません。

▽ 英語読解

 読解についても、逆接・否定・対比・不等号・例示のそれぞれにマークをつけながら、読み進めていく方式を取りました。

 もちろんすべて精読するのですが、文章のいうのはも左から右に読み進めるごとに、前の文章の印象が消えてしまうものです。どこにどんなことが書いてあったかさえも、よくわからなくなってしまう。思い出せなくなってしまう。読解においては、往々にしてそういうことがあります。

 それを防ぐためには、しるしをつけることが大切です。そういう意味で私はディスコマーカーを多用していました。また、段落ごとに日本語で短いメモを取ることで、前の文章の記憶を定着させていきました。

▽ 小論文システム

 小論文の勉強法は二つに分かれます。

 まずは、基礎の型を叩き込むこと。

 これの基礎の型のことを私は、序破急小論文と呼んでいるのですが、

一、序≒要約

 逆接・否定・対比・不等号・例示に記号を振り、その記号が多い部分から要約を書き始めます。

二、破≒自説の展開

 問題の分解、問題の設定、なぜなぜ分析、利害関係者検討、多方面検討、などを用いて自説を展開します。

三、急≒説得

 背理法、前提条件確認、定義確認などを用いて、読み手を説得します。

 と、このような方法論を教え子には叩き込んでいます。これは、私が講義した無料動画があるので、欲しい方は、受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)していただければ無料でお見せします。

▽ 小論文と英文読解の背景知識

 もうひとつは、背景知識の習得です。

 これは、リンガメタリカとアカデミックの計六冊を半年で暗誦することで、英語の勉強と両立させつつ習得します。時間がなければ、リンガメタリカ一冊を一ヶ月で暗誦するのでもかまいませんし、文系部分を二週間で暗誦するのでもかまいません。

▽ 方法論の大切さ

 最悪の状況でも、どうにか合格を勝ち取れたのは以上のような揺るがぬ方法論があったからです。方法論は受験勉強をする上で、もっとも大切なものです。

 ですから、ここからは、勉強法の概論について述べたあとに、各教科攻略の方法論について詳しく話していきたいと思います。


36)

▽ 劣等生

 わたしはほんとうにどうしようもない劣等生でした。元引きこもり。成績は学年で313/320位。偏差値は40から50ぐらい。そこから、慶應SFCに合格しました。

 人はいいます。地頭がよかったのだと。しかし、私はIQなんて90しかありません。地頭がよかったわけではないのです。方法論が良かった。だからこそ、私は合格できた。

 方法論次第で、人は変われる。人生は変わる。

 私は、そのことをみなさんに伝えたいのです。この本はそのための本です。

▽ 方法論の良さ

 巷には、受験勉強本があふれかえってきます。スケジュール管理の本や、どの参考書を使えばいいのかという内容が主なです。

 しかし、私には、どれも不十分なものに思えます。

 それは、これらの本が、もっとも大切な「どうやって覚えるか」という部分についてほとんど何も書いてないからです。最終的には、根性で覚えろとか、丸暗記しろとか、そういった内容に落ち着くことがほとんどです。

 そのことに我慢がならなかった。

 ではここで、なぜ勉強がつまらないのか? どうしていい大学に行きたいのにあなたは勉強しないのか? あるいは勉強しても成果が成績に現れないのか? という話をしたいと思います。一番気になっているでしょうから。

 その答えはあなたが使っている多くの参考書や授業は工夫のない単純暗記をするからです。ゴリゴリ暗記、丸暗記といわれるような勉強法です。

 私が提案する勉強法は違います。

 ひとつの知識から芋づる式に多くの知識を習得する。それが私の勉強法です。

 多くの知識を習得するときにも、身近な生活での話題と絡めて、楽しく、そして日々の生活に役に立つように学習する。なるべく覚えることを少なくして、一つの事柄から多くの事柄を習得できるようにする。

 このことを意識すれば、勉強はかならず楽しいものになります。

 ですから、この本ではまず大量の単純暗記をなるべく排します。覚えることを必要最小限にし、あとの知識は芋づる式に習得できるようにすることを方法論の軸とします。

▽ 科学的な勉強法

 さて、「どうやって覚えるか」ということについて、最新の認知心理学・認知言語学・大脳生理学の知見は、多くのことを明らかにしています。

 たとえば、

一日一時間半年で英論説文300枚暗誦する方法!

中学一年生レベル255単語から10日で早慶合格レベル6000単語を習得する方法! (+小学生でも知っているカタカナ語100から、センター一千単語を習得する方法!)

早慶合格レベル1000熟語を一週間で習得する方法!

 最新の研究は、こんな不可能に思えることをも可能にします。

 これらを実現するための方法は、どれも形態素分析や、フレーム意味論、概念構築の理論によるもので、科学的に、多くの人に効果があることを実証されているものです。今までの気合と根性の受験勉強法とは、そういった意味で一線を画しています。

 従来の気合と根性と地頭に依存した勉強法ではなく、

一、なるべく覚える量を少なく

二、なるべく覚えやすい方法で

三、なるべく覚えるのに時間と労力がかからない方法で

 効率的に東大早慶に入れる方法をここでは書きたいと思います。

 (東大や早稲田に関しては私が実際に合格したわけではないので、理一の柳本くんや東大大学院の長谷川先輩に意見を伺いました。他の東大早慶の在学生の方もご意見がございましたらぜひ、受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)のアドレスに連絡していただければ幸いです。)

 また、地頭に関係なく効果がある方法のみを取り上げます。

 サピア・ウォーフ仮説という言語学の理論(およびその検証結果)によれば、数学においては十進法で数をカウントする民族と六進法で数をカウントする民族のあいだには数学的能力に有意差があるそうです。しかし、言語に関してはそのような差はないそうです。たとえば、黒と白しか知らない民族に緑と赤の絵の具を見せても、その違いを区別することはできる、といったように。

 また、ノーム・チョムスキー博士の最新の研究によれば、人間の頭の中には生まれながらにして、普遍文法とよばれるものがあり、人は生まれながらにして文法を知っているのだそうです。

 にもかかわらず、民族間によって使う言語が異なるのは、周囲の言語に応じて、生まれながらに持っている文法の知識を変化させて、その言語に応じて自由自在に感情表現・意思疎通できるようにするためだといわれています。

 このことから分かることは二つあります。

 第一に、英語にせよ国語にせよ、そこから学ぶことのできる社会科にせよ、基本的にこれらは地頭の問われる教科ではないということです。

 第二に、人間は外国語を習得するときに、一度ある程度の文法に関する情報をあたえてしまえば、後はひとりでに外国語がうまくなっていくものなのだということです。

 そういう意味でも、

① 語源(接頭辞・語幹・接尾辞)まて遡って210の中学レベル単語から派生した5000もの早慶レベルの単語を習得させ

② 教え子さんの大好きな洋楽の歌詞などを活かしながら40100の例文をまずは暗誦させてしまい

② あとは300枚の英語論説文を暗誦できるようになるまで音読させる

 という私のやりかたには、絶対の自信を持っています。

 こんなことはムリだと思われるかもしれませんが、誰にでもできることです。それこそ、be動詞すら分からなかった私の教え子たちでも半年足らずで①~③まで出来るようになりました。

 そんな経験からも、今回、この本では、まず英語・国語・小論文など短期間で多くの点数を稼ぎやすい科目に多くのページ数を割くことにしました。

 もちろんいうまでもないことですが、ムダな参考書は使いませんから、費用は限りなく無料に近いものです。学校で配られるものだけで実行できるように工夫したため、やろうと思えば完全無料で東大早慶合格を勝ち取ることもできます。

 そう、この勉強法は、だれにでも、どこででも、どんな境遇でも実行可能な勉強法なのです。

 この本は、参考書あさり・予備校めぐりをせずに、学校から配布される問題集・参考書とインターネット上のリソース(無料の動画授業・アプリなど……)のみを用いて、東大早慶あるいはそれに類する大学にあなたを入学させることを目的として書かれた本です。

 使う参考書はそれぞれの科目のそれぞれの分野ごとに一冊だけです。

 受験勉強法の本によく書かれている「一冊を完璧に!」を私も大切にします。このことは、他の受験勉強法の本や、逆転合格を売りにした塾でもよく言われることですが、それと同時に実際にこの言葉を守りきれている人は講師の中にも教え子の中にもほとんどいません。利益を追求する予備校や塾ではなおさらです。

 もちろん、逆転合格系の塾でも一冊を完璧にを標榜する塾が多いことは事実です。しかし、実際には、一冊を完璧にしないままに、(あるいは一瞬、確認テストのときだけ完璧にしても、生徒はテストが終わればすぐ忘れることをまったく考慮に入れずに)、たくさんの参考書を使う逆転合格系の塾が多いのも事実です。ほとんどの塾がそうです。そんな中で、使う参考書を各分野一冊絞っているのは私の教え子ぐらいではないかと思います。

 これにより、確認テストのときだけの「わかったふり」を防ぎ、いつまでも、完璧にした一冊の記憶を持続させ、最高の状態で入試に臨むことができるのです。

 あなたはこの本のとおりに勉強すれば、どんなひどい状況からでも、\0で東大早慶あるいはそれに類する大学に合格することができます。

 ウソだと思うかもしれないけれど、本当です。

 私は、まったくお金をかけずに、あなたを東大早慶に合格させます。

 

0-2.まさかの不登校。

 そうした勉強法に触れる前に、ちょっとだけ私の話をさせてください。この話を読めば、きっとこんな人にでも実行できた勉強法なのだから、私にだって出来るはずだと自信がわいてくるはずですから。

▽ がんばっても上がらない

 まず受験生時代、私がもっとも困っていたのは、「がんばっている(つもり)でも成績があがらない」ことでした。勉強はしていた「つもり」だったのですが、本当に悲しくなるぐらい成績があがらなかったのです。

▽ 中学レベルの勉強法

 いまにしておもえば、その原因は中学レベルの勉強法にありました。

 中学校の勉強というのは、書きなぐりであったり、ノートまとめであったり。そういった非効率な方法でもどうにかいい成績が取れるのです。覚える内容そのものが少ないですから、こういったやり方でも、何度も何度も反復できる。

 そして、これが大切なことですが、参考書自体も少ないので、一冊を何度も何度もやりこむことによって完璧にできる。

 しかし、高校の勉強は違います。参考書もたくさんあり、ついついあれもこれもと買ってしまいます。書きなぐりやノートまとめでは追いつかないぐらいの量があります。何度も何度も反復することは出来ません。一冊を完璧にすることはできません。どんどんどんどん周りからは置いていかれます。

 これが、高校生が受験勉強において陥りがちなもっともありがちな失敗です。大切なことは一冊を完璧にすることなのです。

 さて、結果として、私は落ちこぼれ高校生にありがちな「どんなに頑張っても報われない努力の日々」に嫌気が差して、学校に行かなくなりました。まさかの不登校です。


0-3.まさかの不眠症、そして引きこもり。

▽ 不眠症

 学校に行かなくなった直接の原因は、どうにも眠れなくなってしまったことです。夜寝ようとします。眠れません。どうにかして眠ろうと思うのですが、そんなことを考えているうちに朝が明けてしまいます。

 こんなことの繰り返しで、次第に精神的にも不安定になってきて、微熱や下痢がずっと続くようになりました。

▽ 音楽が聞けない

 次の異変は、音楽が聴けないことにありました。

 私は、ラルクアンシエルやニルバーナが好きで、毎日のように聴いていたのですが、どうにもうるさくて我慢ができない。寝ていないこともあって、イライラしていたのでしょうか。わけのわからない怒りみたいなものが、ぐわぁと沸いてきて抑えられないのです。

▽ 食事の味がしない

 また、食事をしていても、食事の味が分かりません。

 ごはんをたべていても、お米は糊を食べているような気持ち悪さを感じながら噛まなくてはならないし、味噌汁など生暖かい水を飲むようなものです。

 これには本当にかなしくなりました。これからの人生で、何かおいしいものをたべたりとか、きれいな女の子とあそんだりとか、おしゃれな服を着たりとか、そんなことはもうできないのかと。そういったあたりまえの、ささやかなしあわせがいかにかけがえのないものであるかを私はまざまざと感じました。

▽ 本が読めない

 これはわかってもらえないかもしれませんが、こうして本を書いていて思い出したことがひとつあります。それは、私はこんな本ですら、ろくに読めなくなるぐらいまで体調が悪化していたということです。

 文章を読んでいると、それぞれの単語がばらばらになるような感じがします。一行の文章を読んでいるのに、どこからか裂け目ができるようにして、一行の文章が二行にも三行にも見えてきます。

 そんな中では勉強もおぼつきません。

 一日中、ベッドの中で布団に包まりながら、NHKの高校講座などを見ると、本当に生きているのがいやになってくる。そんな毎日を三ヶ月ほどすごしていました。あれは、本当につらかった。

▽ 病院通いととてつもない挫折感

 私の挫折感みたいなものを、より濃くしたのは、病院通いでした。学校に行く高校生たちを尻目に、人には見られないように実家から一時間もかかる病院にタクシーで行き、睡眠薬をもらう。これだけのことが私にはものすごく堪えました。

 周りの患者さんは、なんだかうなだれたような、気力がないような、そんな感じの表情をしています。しかし、外に出れば、楽しそうな高校生や大学生の姿が見て取れます。私は絶対に知り合いには見つからないようにやりすごさなければなりませんでした。

 私の通っていた高校は、地元ではそこそこ名前の知れた中途半端な進学校でした。ですから、きっとエリート意識みたいなものもあったのでしょう。自分がレールから外れてしまった、もはやまともな人間であることすらできない。こんなことを考え続けては、悲観に暮れる日々でした。

▽ 世界から見捨てられた気分

 この気分はきっと、こうした経験をしたことがある人でなければわからないでしょう。人にわかってほしいとすら思いません。こうして本を書いているのは、こんな自分でもどうにかなったのだから、あなたにも希望を捨てずに頑張って欲しいという励ましの気持ちから来るものです。自分の悲惨な境遇を理解して欲しいとはまったく思っていません。

 世界から見捨てられた気分。

 まさしく、それが不登校・不眠症・引きこもり時代の偽りない自分の気持ちでした。もう自分は、この世界ではまともに生きていけないと思っていました。

 事実、不登校の高校生が、大学に進学する確率は、ボーダーフリーのFランク大学をふくめても一割に満たないといわれています。そんななかで私は慶應SFCに入学することができたのですから、やはりこの経験は世の中に残さなくてはと思います。

▽ 勝ち組と負け組

 わたしがこうした経験から学んだことを一言に集約すれば、結局のところ、世の中というのは、勝者が正義で敗者が悪であるということです。どれほど勉強して努力していても、それが結果に結びつかなければ、だれも評価してくれません。こういう話をすると、自分の心の中での満足感や自信が得られれば良いという人もいます。しかし、人は周りから非難された上に、自分の体調さえ芳しくないときに、満足感を感じられるほどには強くありません。

 勝つことこそすべて、なのです。


0-5.まさかの赤点続出。

▽ 復帰時の成績

 さて、どうにかして、学校に戻ったのですが、そのときの成績はひどいものでした。

 いまでも、はっきり覚えているのは、数学のテストで、五点をいただいたことです。学年での順位は、313/320位。

 他の教科でも、赤点をとらないほうが珍しいぐらいの惨状です。


0-6.まさかの転機。

▽ 自習室にひきこもった二年生の夏休み

 さすがにこの成績はまずいということで、私は自習室にひきこもることにしました。▽ まったく上がらない成績

 さて、私はさくさく勉強をすすめてまいりました。

 勘で現代文を解き、助動詞と単語と主語と対象語と敬語を無視して古文を読み、書き下しもできないうちに字の雰囲気で漢文の意味を類推し、作文のように小論文を書き、数学の答えをがんばって写し、英語の文法書は丸写ししたうえで、ろくに文法の問題集もやらず、DUOとターゲットと速読英単語を最初の一ページだけ完璧にし、文章は丁寧に後ろから前に読むようにして解釈をし、独特の日本語訳を書く技術を習得した上で、理科と社会においては、がりがりと覚えたい内容を二十回書くということをしておりました。

 このすばらしい奇跡の勉強法で成績が上がったら……まぁ、奇跡ですよね。

 しかし、心当たりがある人も多いのではないでしょうか?

▽ 東北大医学部の先輩

 そんなときに知り合ったのが東北大医学部の先輩でした。

 私の勉強しても、成績が上がらないことに、見るに見かねたのでしょう。先輩から教えていただいた、とっておきの記憶法が私の人生を変えました。

▽ 記憶を定着させるには

 多くの人が、覚えることに困難を感じるのは英単語です。

 ですから、まずは、英単語の覚え方から先輩は話を始めました。

「英単語を覚えるときに、意味を一対一対応で覚えようとする人がいるだろ? でも、それは効率がわるい。それよりなら、『速読英単語』を一冊丸暗記したほうがいい」

「そんなことできるんですか?」

「できる。誰でもできる。地頭に関係なく」

「どんなふうにやるんですか?」

「まず、一週間目は一章だけやる。文章の解釈もノートにまとめてね。二週間目は一章と二章、三週間目は一章から三章、四週間目は二章から四章、五週間目は三章から五章、というふうに、ひとつずつずらしていく」

「どれぐらいやればいいんですか?」

「一日三回、週五回、三週間。合計四十五回。これだけでいい。かかる時間は一日に一時間もかからない。記憶効率からいって、寝る前にやるといい」

 その話をうかがったとき、そういえば、と私はおもいだしました。

 それは学習障害を持つ中学校時代の友人が、三十回の音読を経て、暗誦に成功したことです。これはなるほど、いい方法だと思ったのですが、多くの受験生がそうであるように、どこか半信半疑ですぐに実行することはできませんでした。

▽ スピードについていくには

 さて入試も直前に迫り、とうとう速読英単語をCDを聞きながら追うようにして読むのですが、困ったことがありました。それは、音声CDのスピードがあまりに速すぎて、うまく合わせられないということです。

 この問題を解決するために、以下のようなステップを取りました。

一、英文と日本文に対応する番号を振る。

二、意味のまとまりで文章を区切る

三、分からない単語の上に日本語訳を書く

四、文構造がわからなければノートにまとめる

五、わからなくても最初の単語だけ発音してみる

六、だんだん単語を増やしてみる

七、最終的にすべて読めるようにする

 もちろん、本当はもっと細かいステップがあるのですが、それは個々人によって違うので、詳しくは受験相談(yourmanifestojp@gmail.comまで!)していただければお答えします。

▽ 私が本格的に受験勉強を始めたのは三年生の冬休みからでした

 しかし、みのもんたがココアを勧めても、飲み続ける人が少ないように、私もすぐにこうした方法を実行に移したわけではありませんでした。

 まず、そもそもこれは地頭を必要とする勉強法なのではないかという疑念がありましたし、実際前述したように、実行する上でのボトルネックもあったので、なかなかうまくいかなかったのです。

 いろいろとムダな勉強をした末に、とりあえず三年生の最後の冬休みの二週間でどうにか単語の意味が理解できる程度にまで単語集を仕上げました。つまり、私が本格的に受験勉強を始めたのは三年生の冬休みからでした。そして、そのまま受験に突入したのです。