今日は、「なぜ学生起業家の九割が一年で会社を潰すのか?」実は私はまだ大学生です。大学四年生。出資していただいた方からでさえ、振込が終わってからまだ大学生だということを確認されてびっくりされるぐらい老け顔なんですが、大学生なんです。
 よく、30歳ぐらいの人と間違われます。株主の方でも、私を30歳ぐらいだと思っていた方もいたそうです。これは大切なことですが、私は聞かれない限り自分の素性も年齢も学歴も話しません。30歳ぐらいだと思われていた方が、商売上有利だということもあります。これは大事なことです。 
 大学一年生のころから小さな商売をしてきました。スカイプ家庭教師。スカイプを通じて、全国の志の高い教え子様に指導をしてきました。私は運が良くて、いいスタッフに恵まれました。おかげさまで、今年も九年間不登校だった教え子様が慶應に合格したり、国語偏差値40だった子が早稲田に合格したり。
 
一方で、大学一年生のとき、起業サークルなんかをつくって、「起業するぞ起業するぞ起業するぞ」とやっていた友達の大半が失敗しました。最近こういう話が流行っているので、今日は「なぜ学生起業家の九割は一年以内に消えるのか?」について書きたいと思います。
 まず、一つ目は、固定費が高すぎることがあります。例えば、営業の給料と経費が月20万、技術の給料と経費が月20万、家賃・税金・雑費あたりが月10万で粗利益率が30%なら、とんとんになるのに必要な月売り上げは160万です。これでも黒字が出ない。あくまでもとんとんになるだけです。
 粗利益率を上げればいいのですが、それができない。なぜなら格好付けて、みんなに良い顔をしようとするからです。みんなに良い顔をすると、最初のうちは商売は成り立ちません。声高に僕これできません!という人も多いですが、最初のうちは利益率を上げるためになんでもやらないといけません。
 人も巻き込まないといけない。でも、巻き込めない人が多い。どうしてかというと起業家になりたいと思うたいていの人が自分勝手だからです。人の話を聞かない、人の相談に真剣に耳を傾けない、建設的な解決策を提案することなんてさらさらない。人に与えなければ、自分が与えられることはありません。
 かろうじて、粗利率が高いビジネスで、黒字化できたとしましょう。しかし、粗利率が高いビジネスはもうすでに業態として確立されているビジネスであることが多く、一言でいうとベンチャーで安い給料我慢してまでやるような面白い仕事ではないことが多い。(私はどんな仕事も面白いと思いますが。)
 そこで必要になって来るのは、同業他社とは違う理念やビジョンです。たとえば弊社であれば他の会社が夜九時には閉める・休日には休むところを24時間365日営業にすることで、学びたい時に学べる環境をつくることは、「すべての人々に成功への機会を提供する」という理念から来るアクションです。
 そういうものがないと、たとえビジネスとして儲かったとしても、人が居着かず、結局のところ規模拡大が出来なくなるし、社長が病気になるなどの突発的なアクシデントに弱くなるような気がします。資金繰りがきつくなったときにスタッフが踏みとどまるか去るかはこれで決まります。
 あと、これもすごく多いんだけど、社長だ社長だと威張るスタートアップの経営者にろくな人はいません。これは経験的に本当に思います。意思決定の理由を聞かれたときに、私が社長だから聞けと言う人はスタッフから相手にされません。ロジックを組んで、相手をやる気にできないとダメです。
  スタートアップでは、社長ー部下みたいなガバナンスを効かせる事が難しい。理由は二点あって、一つは従業員からすれば小さな会社に働きに来てやっているという意識が強いこと、もう一つは社長と部下に大した実力差がないこと(特に学生起業の場合)。指示はロジック組んで納得させないと通りません。
 
あと、俺は社長だといってモテようとする人も理解できません。私は遊ぶ時は名前も素性も変えて遊びますが、ある時ふと自社サービスの事を他人のフリをして評判を聞いてみたら(学生界隈ではそこそこ知られていました)、自社サービスのことをよく知っていてぞっとした記憶があります。
 思いついた順に話してるので、脈絡がなくて申し訳ないですが、あと固定費をだらだら垂れ流すだけで終わるベンチャーもすごく多い。たとえば、月のランニングコストが50万として、300万手元にあるとして、6ヶ月分のランニングコストを使い果たして、商売は立ち上がらずに終わる、これが多い。
 気持ちは分からないでもありません。たかに300万を月50万ずつ使えば、6ヶ月分の給料は出ます。しばらくは安心できます。ただそれだけです。その範囲の中でだらだらビジネスをしていても、なかなかサービスがうまく立ち上がらないことが多いです。
 私はスカイプ家庭教師を始めたときは、貯金が20万を切っていて、それが逆に良かったと思っています。うち10万円を勝負にぶち込んだ。それで、安定した売り上げを立てることができるようになったのです。
 たとえば手元に300万あったら、一ヶ月のランニングコストぐらいは、オープン一ヶ月後、このやり方がうまく行くと分かった広告戦略1つか2つに集中投下します。確実に売り上げが立つと分かっているものでなければなりませんが、そしてある程度一気に売り上げを作ってしまいます。
 たとえば、10万〜20万ぐらいの予算で、法人向けなら数万社、一般消費者向けなら数十万人〜数百万人に認知していただけるような作戦を考えるのです。それが広く口コミで広がるようなもので、かつwebサービスなら直接リンクからクリックしてサイトに飛べる形ならなおいい。
 こういう作戦を二つぐらい、あと人海戦術でお金は掛からないんだけど、一人月ぐらいつきっきりになるような作戦を一つぐらいやって、顧客が大量に流入する経路を作るのです。工夫すれば必ず出来ると思います。かつてもやってきたし、これから一ヶ月でもまた必ずやり切ります。
 とはいえ集客方法は見えないことが多い。私は前職で同じ業種を商売をしていたので、経験としてこれがいいというのは結構分かるのですが、最初は何も分かりませんでした。そういうときに集客方法を身につけるコツは三つあります。
 一つは、集客がうまい人に手伝ってもらうことです。アドバイスをしてもらって、そこまで言うならお前やれよというふうに頼むのが効果的です。あと、合コンでうまくいってる他社の社長を呼んで来て、女の子の前で見栄を張らせてしゃべらせるのもいいですね。
 三つ目、同業他社の研究は多くの人が最初に思いつくこととしてしていますが、同業他社の集客方法を真似してもお追従程度の利益しか出ません。これはおすすめしない。喰う分には困らないですが、スケールしません。他業他社の集客方法でうまくいってるものの方が学べる部分が大きいです。
 あと、1.在庫があるビジネス、2.初期投資が掛かるビジネス、3.最初から大きなマーケットを狙うビジネス、4.単発課金のビジネス、5.労務管理が難しいビジネス、6.利益率が低いビジネス、7.課金単価が小さいビジネスはだめです。それぞれ説明します。
 1.在庫があるビジネスは、在庫の管理は本当にむずかしい。将来何が売れて、何が売れないかなんて分かりません。物じゃなくて、人の時間を売るようなビジネスのほうがいい。人材派遣業とか、塾とか、水商売とかはすべてそうですね。かつ、人が待機してる時間にお金を払わなくて済む仕組みを作る。
  たとえば、弊社の質問対応サービスの場合、スカイプにログインしただけで出金が完了するようにすることによって、待機時間にお金を払わなくて済むようにしています。水商売なら、店に待機している時間に給料が出ない場合、お客がついたら高い歩合を払うようにしています。これは弊社もそう。
 
あと、蛇足ですが私が商売をはじめてから一番尊敬しているのは、水商売やパチンコ業を営んでいる方です。値段を下げずに人を呼ぶ水商売は接客の天才だと思いますし、外から見たら値段も出玉還元率も分からないパチンコに人を呼ぶのもやはり商売の天才だと思っています。彼らから学ぶことは本当に多い。
 2.は初期投資が掛かるビジネス。これはまぁ、うまくいっていて、拡大してもうまく行きそうというパターンなら良いと思いますが、最初はお勧めしません。どんな商売でも、その一部であれば、最初は低コストで始める方法があるはずです。死ぬほどそれを考えましょう。
 たとえば、将来カレー屋をやりたいなら、店作る前に起業資金貯めるのは無駄です。廃車を5万ぐらいで買って、屋台作って売りに行きましょう。その方がよっぽど学べる事は多いし、お金もすぐ貯まる。品川なんか、飲食店少なく、ヤクザもいなさそうで、昼に弁当屋台出すには良い場所だと思います。
 3.は最初から大きなマーケットを狙いにいくビジネス。たとえば、個人塾とかで高校受験も大学受験もやりますと宣伝している個人塾がありますが、はっきりいって私はこういう塾は信用できないと思います。だって先生の予習や過去問研究が追いつかないことが目に見えているからです。
  だから私は、最初は不登校・引きこもりの子の慶應進学しか見なかった。これからも流入経路を作る時は、専門特化型の業態しか作りません。No.1の集合でNo.1になる。そういえばベネッセさんの進研ゼミもそうです。○○中学定期テスト対策No.1の集合で圧倒的一位になってます。
 
4.は単発課金のビジネス。私は一回で1万円取るビジネスより、月3000円取るビジネスの方が総売上は高いことを知っています。一回で一万円も取られたら、そう頻繁には使わないからです。5.は労務管理が難しいビジネス。これは風評リスクを回避するために絶対やらない。
 だから、よく売春斡旋とかをしているイベサーの子の話とかを聞きますが、バカだなと思います。塾のほうがよっぽど儲かる。
 なぜなら、講師は高学歴で労務管理が楽だし労働分配率も低い、第二に月額課金なので安定して売り上げが上がる、第三に切実な需要があり不況の時ほど需要が強まるので、選ぶマーケットによっては不況に強い。あと、合法だというのが一番大きいですね。ヤクザに金取られませんから、これはすごく大事。
 6.利益率が低いビジネスもやりません。利益率が低いのは、大して世の中から必要とされておず、かつ同業との差別化がなされていないからです。そういう仕事にはやりがいがない。
 同じ理由で、7.課金単価が低いビジネスもやりません。これも世の中でそれほど必要とされていないことを証明するものだからです。弊社では月々3000円から勉強の質問に難関大学生がいつでも答えてくれるサービスをしていますが、お客様の中には月10万払う人だっているわけです。
 それぐらい必要とされるサービス、親戚中に借金してでも受けたいとおもうサービスでなければ、好況のときは何かの間違いで買うかもわかりませんが、不況になったり競争環境が変わると一気にお客様が離れます。だからだめです。
 あとは、失敗の理由として、スケールを大きく考えない顧客の反応率・購買率の見積もりが甘いというものもあります。たとえば、数十人の友達に言えば使ってくれるだろうとか、購買率は1%はあるだろうというのはダメな奴の典型です。
 数万、数十万、数百万の人に認知してもらい、うち0.1〜0.3%でも購買してくれれば成り立つようにするか、数十人にしか認知されなくてもいいから、購買確率を10%〜100%にまで引き上げるような何かがあるか、どっちかじゃないと行けません。前職では後者を狙い、これからは前者狙い。
  あと、ピンチはチャンスというのも本当。すごい目上の人に、僕の部下になってくださいとは言いづらいものだけど、僕に出資して下さいとか、僕にお金化して下さいというのはすごくいいやすい。
 
実際お金を借りると、溶かされたら困るので目上の人が目の色変えて、自社のために働いていただけるようになる。給料を支払っているスタッフというのは、これほど目の色を変えて働く事はなかなかない。やはり創業期は、仲間から借りるなり、会社にお金突っ込んでもらうのが一番モチベーション上がる。
 あと、満足すると成長が止まるのも本当。かならずしも成長なんかする必要ないと思うのだけど、成長したいのならば満足してはいけない。たから質素倹約にして、常にハングリー精神を燃やし続けた方が良いと思う。これは経験的に。ちょっとした小成功で満足すると、その成功すら続かなくなる。
 あと、店とかに遊びにいって、客数と立地を見て、ああこれどんなにがんばっても絶対黒字化しないなという店は残念ながらある。webサービスも対応できるキャパとか考えると、これむずかしいなというのはいっぱいある。計画の段階で結構失敗が分かる事は多い。なのにわからない。どうしてか。
 それは経営者が見たいものを見ているからだと思う。事実と解釈があるとすると、失敗する人は、事実と解釈が一致してない。経営者は見たいものを見るのではなく、見るべきものを見るか、事実を見たいものに無理矢理変えるしかない。前者がいいような気が私はする。費用対効果とか成功確率的に。
 あと、題名を、意識が高い学生起業家はなぜ一年で九割が潰れるのか、とした。潰れるという動詞に掛かる主語は、意識が高い学生起業家である。人は法人よりは潰れにくいのだけど、人が潰れちゃうんだよね。それが悲しい事だと思う。戦略と戦術・実行どちらが大事かといわれれば、2:1で前者。
 あと、https://t.co/mQlCWvsNngで資金は自分で貯めた金に限ると書いてあるけれど、そもそも自分がやりたい商売が資金が無いと出来ないなんていうのは幻想で、たいていは資金がなくても出来ます。
 だから資金が無い人は、無い状態でそのまま起業すればいいです。できることから始める。それでお金が貯まるなり、出資や融資を受けられるぐらいの信用が出来たら、そこで規模拡大すれば良いと思います。私もそうでした。
 http://t.co/4I5zhvwB62 この記事を読んだのも大きかった。まぁ、でも自分は大学一年生で商売始めたから誰もお金を貸してくれる人など居なくて、だからリスクはなかった。もしかしたら、借金できる程度に信用力のある世間知らずが一番リスクは高いのかもしれない。